非正社員をどうなくすのか

2020年度から「非正社員をなくす」という政府の働き方改革の目玉として、同一労働同一賃金が実施される。無期や有期等、働き方の違いにかかわらず、同じ仕事には同じ賃金との大原則には誰も反対しない。だが、どの賃金を標準にして合わせるかという、もっとも肝心な点が法律上、明確にされていない。

このため「現行の年功賃金が標準」という重大な決定が、官僚が決めるガイドラインや通達で定められている。この結果、すでに職種別賃金が成り立っている派遣社員の賃金まで、派遣先の年功賃金に合わせるべきという、時代錯誤の内容となっている。

過去の高成長期で若年者が大部分を占めていた人口構造の下で成立した年功賃金を、今後、急速な高齢化が進む低成長の日本で本当に維持できるのか。結局、大企業や官庁等、一部の人たちだけが年功賃金の恩恵を受ける一方、よりフラットな賃金に近い中小企業や有期雇用の社員との間には年齢が高まるほど格差が生じる。

これに対して、有期雇用にも年功賃金を適用すれば良いという論理は成り立たない。年功賃金は長期勤続と一体で高賃金を生むため、勤続年数の短い有期雇用は、事実上、適応対象外となるからだ。

有期雇用者を無期化すればよいという労働契約法も、通算で5年になる前に契約更新を打ち切られ、逆に雇用の不安定化が生じている。そもそも不況期に無期雇用が維持されるためには有期雇用の雇い止めが必要という「不都合な真実」から目を背けるべきではない。最近増えている有期雇用には定年退職後の1年契約の再雇用も多い。その賃金が定年前より大きく下がるのも年功賃金の清算である。

年功賃金が修正されると生活できないというのは夫だけが働く高成長期型の世帯である。逆に、夫婦が共に年功賃金の正社員というパワーカップルが増えれば、新たな格差拡大をもたらす。夫婦が共に働き、共に家事・子育てを行う働き方を、速やかに標準世帯とすべきだ。年功賃金を維持したままでの格差是正は、見せかけだけの答えのない問題である。本来の職種別労働市場の下で同一労働同一賃金という王道を目指すべきだ。

日本には「非正社員問題」はない。あるのは経済社会の変化に対応できない「正社員問題」なのである。

吾妻橋 氏)