自分を磨くスマート有休 職場の理解が第一歩

働き方改革の流れで休みやゆとりが増えた人も多いだろう。年5日の有給休暇取得を義務付けられたが、目的もないまま時間を無駄にするのはもったいない。有休をスマートに取得し、積極的に活動して自分を磨くワンランク上の休み方を探った。

ポートランドでビール醸造を体験し、カリフォルニアで海外ウエディングについて学ぶ――。カスタムウエディングサービスのCRAZY(東京・墨田)で働くオア明奈さん(33)は2017年夏、2週間の「旅」を経験した。夫との夢に近づく一歩だ。

CRAZYは自分で決めた期間の休暇を取得できるグレートジャーニー(GJ)制度を12年の創業時から導入。社員のほぼ全員が年に1回、1カ月程度の旅に出る。オアさんは15年の入社以来、5回制度を利用したベテラン組だ。

CRAZYが重視するのは「ただの旅行にしないこと」。GJ制度を使う社員は出発前に旅の目的をプレゼンテーションし、社内の仲間と共有する。長期休暇を取得しやすい夏季と12月のウエディングの閑散期を活用し、仕事への影響を最小限に抑える。社員同士が理解を深め、仕事でも信頼しあえており、長期休暇をとるハードルは低い。

同社は毎日、社員全員でランチをする制度がある。さながら学校の給食のようだ。例えば、同僚が仕事に行き詰まっていると気づけば、他の社員がGJを勧めるケースもある。それほどカジュアルな仕組みだ。

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働き方のコンサルティングを手がけるワーク・ライフバランス(同・港)の小室淑恵社長は「3、4日以上のまとまった休暇取得が仕事のイノベーションにつながる」と指摘する。あえて仕事とは別世界に飛び込むことで、中長期的に個人の財産としてビジネスに生きてくる。

中央大学佐藤博樹教授は「今後は会社以外での役割も受け入れる柔軟性が重要だ」と強調する。小室社長は休みの過ごし方について、「地域のボランティアなど仕事以外のコミュニティーに参加するのが望ましい」と提案する。休みに学習するのであれば、「上司と20~30年後を見すえたコミュニケーションの場を設け、スキルを伸ばしたい分野を見つけてほしい」(小室社長)。

「職場に迷惑をかける」。もっとも、ほとんどの従業員は、職場でこんな罪悪感を抱きがちなのが現実だ。旅行予約サイトのエクスペディア・ジャパンによる世界19カ国・地域の調査では、18年の日本の有休取得率が50%だった。対象国でもワーストグループだ。

円滑に休暇を取得するには、同僚や取引先とのコミュニケーションがカギを握りそうだ。小室社長は休みにしたいことを付箋に書き込み、職場でオープンにするよう提案する。多様な価値観に触れるきっかけになり、人柄を含めてダイバーシティーを認め合うことにつながる。

ワークフローを確かめるためにも、意思疎通は欠かせない。佐藤教授は「突発的な仕事が発生しても、取引先としっかりコミュニケーションできていれば、解決の糸口が見つかりやすい」と話す。休暇も日程を決めてから業務を調整することで「タイムマネジメントが上達する」(佐藤教授)。

休暇中は仕事の連絡を気にしがちだ。小室社長は「『1日1回、何時にメールを確認する』と職場に伝えておけば、気がかりがひとつ減るはず」とする。

多様な働き方や価値観が広がり、ビジネスパーソンを取り巻く環境も目まぐるしく変わる。柔軟な発想で仕事も休みもデザインしていくのが、これからの令和のライフスタイル。「仕事とプライベートを線引きするのではなく」(オアさん)、長期的な視点で人生の目的を明確にし、豊かに自分の時間を見つめることで、人生も充実していくはずだ。

佐々木望 氏)