大阪大 接合科学研究所 アジアの学生と工場研修

大阪大学が海外の大学と連携を深めている。接合科学研究所が中心となり、インドネシアなどアジアの大学に所属する学生と阪大の学生を一つのチームにし、大手企業の工場に派遣。技術開発や人材育成など企業が抱える課題に取り組む。国内の大学で唯一、接合専門の研究所を持つ阪大はベトナムハノイ工科大学に施設を設けることを検討するなど、ものづくりの基盤をアジアで整備する。

兵庫県相生市にあるIHI相生事業所。8月下旬、火力発電所で使うボイラー機器設備を製造する同事業所で阪大とインドネシア大学の学生8人がインターンシップに臨んだ。「グローバル人材の育成」を研修課題とし、工場で働く日本人、インドネシアのグループ会社で働くマネジャー、技能実習生など様々な立場の人物にインタビューを実施。お互いにコミュニケーションを取る上で抱えている課題を聞き取った。

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参加した学生からは「インタビューは全て英語。内容をくみ取るのに苦労した」(阪大院の大津雄さん=24)、「チームワークを機能させることの難しさ、相手を尊重することの大切さを学んだ」(インドネシア大のモニカ・サルサビラさん=21)などの声が上がった。

阪大が2013年から取り組む「カップリングインターンシップ」はアジアの大学の学生と阪大の学生が4人ずつ、合計8人のチームとなり、日本国内や東南アジアにある日系企業の工場で2週間、研修に臨む。企業側から製造技術や人材育成に関する課題を提案してもらい、その解決に取り組むという内容だ。大手製造業が派遣先となる。

このインターンシップを主導しているのが阪大の接合研だ。自動車や造船、橋梁に必要な金属接合技術の研究開発を担っている。国内大手企業との共同研究で多く実績があり、マツダスポーツ車RX-8」では摩擦熱でアルミを接合する特殊な技術が採用された。軽量のアルミを車体に使うことで燃費性能の改善につなげることができる。

「接合はものづくりの根幹となる技術だ」。接合研の田中学所長は強調する。あらゆる製造業に求められる接合技術を海外に展開するために始めたカップリングインターンシップだが、実はその先は海外大学での拠点設立を検討している。

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数ある大学のうち、アジアのハブ拠点と捉えているのはベトナムハノイ工科大だ。同大学には溶接学科という専門性の高い学科がある。加えて、橋梁などのインフラ開発が今後進む同国では、接合のニーズが高まると見ている。

阪大は21年をメドに、ハノイ工科大に研究施設を設立する構想を掲げる。同大学には溶接工学科はあるが、金属の強度などを調べる測定機器が少なく、実際の試験ができない。阪大の施設を設けることで機器の充実が可能となる。現在も阪大の研究者が一人常駐するなど連携を深化させており、「世界一の接合技術をアジアに広める」(田中所長)考えだ。

阪大は接合研のほかに、生物工学国際交流センターがタイのマヒドン大学に共同研究施設を設け、バイオテクノロジー分野での研究者育成を進めている。ただ、近年は中国や韓国の大学が東南アジアへの進出を加速し、優秀な学生の奪い合いが生じているという。大学単位での取り組みを超え、国内の他大学などと横の連携を作り、どのようにアジアとの接点を作っていくかが問われそうだ。

(杜師康佑氏)