未経験者もIT即戦力に

求人倍率10倍、不足補う 研修、文系に「転身」促す

文系出身者や未経験者などを採用前後に教育し、IT分野の即戦力に育てようとする企業の動きが活発になっている。転職市場ではIT人材の争奪戦が激化し、求人倍率は10倍を突破した。必要な人数を確保できない企業が効率的な育成方法を模索する一方で、IT人材に転身したい求職者に応えるサービスも登場している。

人材大手のマンパワーグループは人材サービスのUZUZ(東京・新宿)と協力し、IT業務未経験の若者を対象にした教育プログラムを7月に開始した。自社の採用選考中にITに関する講座を受講させ、修了した人を雇用する。

定員は毎月20人程度。複数回の説明会を経た人を対象に、50時間超のIT技能研修を無料で実施する。講座を修了し成績など一定の条件をクリアした人材をマンパワーが雇用し、IT人材を求める同社の顧客企業に派遣する。

受講を通じてスキルを身につけ、システム構築や運用を手掛けるサーバーエンジニアや、通信回線の保守などを担うネットワークエンジニアなどを目指す。本人と顧客企業が希望すれば、正社員として転籍することも可能だ。現在15人がエネルギー企業などで実際に働いているという。

マンパワーの池田匡弥社長は「全くの未経験でも講座を通じてIT人材になれる」と話す。2020年中に120人の採用を目指す。

 

IT人材の需要は高止まりしている。パーソルキャリアがまとめた8月の「技術系(IT・通信)」人材の中途求人倍率は10.8倍と前年同月比で1.12ポイント上昇し、14年4月以降で最高となった。

派遣社員の時給も高騰している。リクルートジョブズ(東京・中央)がまとめた三大都市圏の8月の派遣平均時給は、営業事務や秘書などオフィスワーク系が1539円だった。一方でIT・技術系の平均は、34%高い2072円に達する。中でもシステムエンジニア(SE)やネットワークエンジニアの時給は、2420円と高額だ。

一口にIT人材と言っても求められるスキルは様々だ。人工知能(AI)開発などで注目されるデータサイエンティストは、数学や統計学など理系的な素養が不可欠だ。

一方で、ネットワークエンジニアやウェブデザイナーなどに「必要なITスキルは比較的容易に習得できる」(転職サービス「doda」の大浦征也編集長)。文系出身者や未経験人材でも訓練次第で即戦力に育ち、高賃金のIT人材として派遣できる。マンパワーが教育プログラムに注力するのは、抱える人材の高度化が売り上げに直結するためだ。

IT人材への転身を目指す求職者向けのサービスも登場している。

プログラミング教室を運営するインフラトップ(東京・渋谷)は10月、AIやクラウドなどの専門知識を教える講座を開く。転職希望者向けのIT基礎知識研修の受講者が8月に前年比3倍となり、人気の高まりを受けて急ぎ開設した。

CSS」や「HTML」などの基礎的な言語を学んだ後、実務に使える専門的な知識を習得していく。修了後はキャリアカウンセラーによる転職支援のアドバイスを受けられる。期間は7カ月で授業料は約91万円と高いが、IT人材として転職できれば元が取れると見込む、文系出身者の申し込みが相次いでいるという。

転職市場の逼迫を受け、社内人材の育成を見直す企業も増えている。

ソフトウエアの機能検証を手がけるバルテスは、IT未経験の人材を採用し、採用後にエンジニアに育成するプログラムを導入した。採用後2カ月間に計300時間の集中講座を受けさせた後、現場に配属する。

同社のエンジニアは顧客企業の要望に応じて、システムの欠陥などを見つけ出す。「営業職などで培ったコミュニケーション能力が欠かせない」(総務人事部の鈴木綾一氏)と異業種出身者に期待する。企業のデジタル化に伴って検証作業の受注が増え、8月には20年3月期の業績予想を上方修正した。文系出身者を育成することで、人手不足を乗り切る考えだ。

経済産業省によると、IT人材の不足数は18年時点で22万人に達する。30年には先端IT人材に絞っても55万人足りなくなる恐れがあるという。理系出身者に頼るだけでは、ギャップを埋めるのは難しい。