入社直後の就活再開が急増 3年以内の転職登録3割増

若手の転職市場が急拡大している。20代向けの転職サービス登録者のうち、卒業後3年以内の人数は前年に比べ3割増えた。年功序列など日本型雇用が崩壊し、早めにキャリアアップしたいと考える人は入社直後に就職活動を再開している。人手不足で転職しやすい環境が続いているうえ、金融などかつて大量採用した業界に見切りをつける人も増えている。

2019年4月に外資コンサルティング企業に新卒で入社したばかりの東京都渋谷区在住の女性(23)は今夏から転職活動を始めた。すでに複数の転職サイトに登録し、SNS(交流サイト)を通じて他社で働いている人に複数接触している。「今の仕事に不満はないが、自分の能力を試したい」と明かす。

転職支援のマイナビワークス(東京・新宿)が運営する20代向けサービスでは、18年8月~19年7月の登録者のうち、学校を卒業してから3年以内の人が前年同期比34%増えた。若手人材の流動化が急速に進み始めたことがうかがえる。

かつての就活で「勝ち組」とされた業種からの転職が相次いでいるのが最近の特徴だ。 

メガバンクを中心とした銀行業界は数年前まで大量採用を続けたが、店舗の統廃合に加えて定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が加速。銀行の行く末を案じた若手が転職に動き出している。「転職市場では意識の高い銀行員は評価されており、外資系企業などからの引き合いが強い」(エン・ジャパンの峯崎直哉マネージャー)

若手転職が増加する底流にあるのは、終身雇用や年功序列といった日本型雇用の崩壊だ。新卒で入社した会社で定年まで勤め上げるより、複数の会社を経験して早めにキャリアを積みたいと考える若手が増えている。

マイナビが19年に新卒入社した社員に「今の会社で何年働くと思うか」を聞いたところ、「3年以内」が22%で「5年以内」を加えると37%に達した。「定年まで」は21%にとどまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1980年代後半のバブル経済の時代には、入社から3年程度で転職する「第二新卒」がもてはやされた。当時と比べると少子化と人手不足が一段と進み、多くの企業は新卒採用に苦戦している。隠れた逸材がいるとみて転職者を積極的に採用しようとしている。

システム開発などを手掛けるジーアンドエフ(東京・新宿)は19年度に10人程度の若手転職者の採用を計画している。下前雄社長は「大手企業と同じように新卒を狙っていては人材を確保できない」と理由を明かす。

即戦力に育てるため、同社では3カ月にわたり研修を実施。IT(情報技術)教育に加え、名刺交換やビジネスマナーなどの社会人の基礎的な技能を身につけさせる。

「新卒が確保できないために転職者の採用に切り替えた会社は特に中小企業に多い」。若手転職支援のUZUZ(東京・新宿)の川畑翔太郎専務はこう話す。同社の取引企業数は9月時点で1855社と18年に比べ10%増えた。

若手の転職者を引き付けるため、新しい職種をつくった企業もある。結婚式場などを運営する八芳園(東京・港)は20代に的を絞り「観光戦略プロデューサー」の募集を始め、10月に1人が入社した。同社の主力事業は結婚式場の運営だが、少子化や挙式披露宴の実施率低下などで低迷が続く。新たな収益源として観光事業に本格参入するのに合わせて募集した。

前職が営業職なら転職先も営業職というように、通常の中途採用では自身の職務経験を基に転職先を決めるのが通例だ。しかし若手の転職志望者は職務経験が浅いため、転職先を定められないケースも少なくない。「具体的な業務内容を示して仕事のイメージを持ってもらうのが狙い」(同社)という。

若手の転職は「売り手市場」が続くが、景気の足取りが危うくなれば、転職者の意識が変わる可能性もある。米中摩擦の長期化など先行きを不安視させるサインもともっている。

■早まる新卒採用が誘因

 

大学生の就活が早期化していることが若手転職が増えている要因の一つになっているとの見方もある。

3年生の3月に説明会が解禁され、4年生の6月に選考が解禁されるのが経団連の採用ルール。しかし就職情報大手のディスコ(東京・文京)によると、9割の会社が選考解禁より前に面接を始めていた。優秀な学生を早期に確保しようと考える企業が選考時期を早めている。

「思ったより簡単に内定が取れた」(都内私大の女子学生)。過熱する売り手市場の中で、一部の学生は本来時間をかけて取り組むべき業界研究や自己分析が不十分なまま内定を獲得する。そのため入社後に「社風が合わない」「思っていた職場と違う」などと判断して気軽に退社する風潮があることも背景にある。

採用コンサルタントの谷出正直氏は「企業を消費者感覚で選ぶ新卒学生が一定数いる」と指摘する。こうした学生は内定獲得後も「よりブランド力のある会社に」「友人や知人に自慢できる会社に」と世間体を気にし、それは入社後も引きずる傾向があるという。(鈴木洋介氏)